映画「春画と日本人」

日本初となる大規模な「春画展」の開催までの道のりを追ったドキュメンタリー。興味深い内容でおもしろかった。 監督・製作・撮影:大墻敦。上映時間は87分。佐賀のシエマで見た。 2015年に東京の永青文庫で開催された「春画展」を見に行った。貴重な春画約120点を一堂に集めての展示はすばらしかった。 それまでも肉筆浮世絵展などでわずかながら春画は見ていた。2013年に大英博物館で「春画展」が開催されたのを知ったときは、何で大英博物館?と思った。この永青文庫での「春画展」は、大英博物館での「春画展」の巡回展として企画されたものだ。 国内外で秘蔵されてきたとても状態のいい春画の鮮やかさには圧倒された。ユーモアに溢れていていやらしい感じはそれほどでもない。美術品としてすばらしく、春画抜きに浮世絵を語れないことも理解できた。 この映画は、3カ月の会期中21万人の来場者で大成功だったという日本での「春画展」開催までの経緯を、主に関係者へのインタビューで追ったもので、日本の美術館の保身的な状況を抉り出している。 展覧会開催までの道のりは平坦なものではなかった。東京国立博物館をはじめとする国内の公私立博物館20館への打診が、すべて断られたという。最初から断られたところが多いが、現場のキュレーターが乗り気でも上層部からひっくり返されたところもあったという。 映画では永青文庫理事長の細川護熙氏が「義侠心から(開催場所を)引き受けた」とあいさつの中で述べられていた。 この「春画展」以降、日…

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映画「象は静かに座っている」

すさまじい映画だった。とてもおもしろかった。 2018年製作の中国映画で、 脚本・監督:フー・ボー。上映時間はほぼ4時間。KBCシネマで見た。 第68回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞、最優秀新人監督賞スペシャルメンションを獲得した、フー・ボーのデビュー作。作品完成直後にフー・ボーは自ら命を絶った。 (あらすじ) 炭鉱業が廃れた中国北部の地方都市。 不良の同級生シュアイをあやまって階段から突き落としてしまった少年ブーは、シュアイの兄チェンに追われ、女友達のリン、近所の老人ジンをも巻き込んでいく。 チェンは、親友の妻と関係して親友を自殺に追い込んでしまった。リンは、親との折り合いがつかず教師と関係を持つことで拠り所をみつけるが、その写真をSNSでばら撒かれてしまった。ジンは、娘夫婦に邪険にされながらも老人ホーム行きを拒んでいる。 ブーとリンとジンは追い込まれて、2300キロ離れた満州里にいるという、一日中ただ座り続けている象の存在に希望を求めて、満州里に向かう。 ブーもリンもチェンもジンも、自殺、事故、不倫、暴力、恐喝、いじめ などの逃れようのない問題に押しつぶされそうになっているが、出口は見えない。そんなかれらには、満州里にいるという象の存在にしか希望を見出せない。 そんな状況が痛いほど伝わってくる。モノクロ映画かと思うほどほとんどの画面は無彩色で、暗くて重苦しい。地方都市とはいえ高層アパートが林立し活気がある町が、かれらに無彩色にしか見えない。この映画には笑…

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特別展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」

歌川国芳一門の浮世絵を集めた展覧会を福岡市博物館で見た。見応えがあった。 幕末から明治にかけての国芳一門の活躍を「ヒーローに挑む」 「怪奇に挑む」 「人物に挑む」 「話題に挑む」 「『芳』ファミリー」という5つのコーナーで、名古屋市博物館の豊富な浮世絵コレクションから選り抜いた約150点の浮世絵で見せる。 国芳は“奇想″の絵師だといわれるようだが、多彩な作品のなかにそういうものもあるだけで幅が非常に広い。 早い時期から西洋画の技法を研究して取り入れるなど研究熱心だ。たくさんの弟子を育てた。 芳年もものすごく多彩だ。この展覧会では展示が限られるが、見惚れる作品がいくつもあった。 「怪奇に挑む」 のコーナーは、見たくない人がスルーできるような配置になっている。 写真撮影OKというのもいい。 (写真は、月岡芳年「東名所墨田川梅若之古事」名古屋市博物館蔵)

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