本郷和人著「壬申の乱と関ヶ原の戦い――なぜ同じ場所で戦われたのか」

とてもおもしろかった。 呉座勇一著「応仁の乱」はそれなりにおもしろかったのだが読むのには晦渋した。 「応仁の乱」を読むのがなぜ晦渋なのかが、この本でみごとに説明されていた。 関が原後の家康の論功行賞の分析もとてもおもしろい。 福島正則がドラマなどでなぜ荒くれ者と描かれるのかの考察には納得してしまう。

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映画「情婦」(DVD)

ビリー・ワイルダー監督による1957年のアメリカ映画。原作はアガサ・クリスティの短編「検察側の証人」で、原作者自身で戯曲化もされている。 ミステリーは苦手だが、完成度の高いわかりやすいミステリーだったから大いに楽しめた。名作だから見たつもりになっていたが、初見だった。 マレーネ・ディートリッヒの演技がみごとだ。殺人の疑いがかけられたレナード役のタイロン・パワーと弁護士役のチャールズ・ロートンも緻密な演技だ。ビリー・ワイルダーの演出力の高さを感じた。

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寺山はつ著「母の蛍 寺山修司のいる風景」

今月17日に見たドキュメンタリー映画「あしたはどっちだ、寺山修司」 で、寺山修司の母・はつの生き様が衝撃的だったので、はつ自身がどのように書いているのかを知りたくて読んだ。 この本は、寺山修司の死のほぼ2年後の1985年に出版されている。はつの寺山修司に対するラブレターにしか見えず、寺山修司もはつ自身もぼかされ美化されている。 はつはこの本で、寺山修司を一貫して「修ちゃん」と呼んでいる。 はつはとても美人だ。母ひとり子ひとりで、はつは息子の3年間の入院療養と大学進学を支えるために必死に働いた。そのあたりの厳しさにはあまり触れずにやや牧歌的に流されている。 寺山修司の最初の結婚相手・圭子さんのことについては触れているのに、九条今日子さんについてはまったく触れていないのが気になった。

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