映画「イメージの本」
ジャン=リュック・ゴダールのこの新作は、「新たに撮影した映像に、様々な<絵画>、<映画>、<文章>、<音楽>を巧みにコラージュし、現代の暴力、戦争、不和などに満ちた世界に対する“怒り”をのせて、この世界が向かおうとする未来を指し示す 5 章からなる物語」とあるが、物語性は薄い。
ほとんど断片的に提示される映像などは、“ほんとうにおぞましいところは自分でイメージせよ”とばかりに、突然真っ黒画面になったりする。
そんな画面を見続けることに拒絶反応が出て、途中で幾度も意識が飛んでしまった。
88歳のゴダールの、「暴力・戦争・不和に満ちた世界への怒り」というよりも、“絶望感”を強く感じる。それを克服するためには“イメージする”しかない。
「気狂いピエロ」を見てから半世紀以上が経つ。いま「イメージの本」を見られることは幸せなことには違いないが、つらい映画だった。