カンパニールーブリエ「Drop Shadows かげのしずく」

フランスのボルドー市に拠点を置くカンパニールーブリエは、今回の公演の演出・振付を務めるラファエル・ボワテルを中心に設立された現代サーカスのカンパニー。サーカスに 演劇、ダンス、映画など様々な分野を様々形で融合させ、新しい身体的・視覚的言語の開発に力を入れていて、特にエアリアル(空中パフォーマンス)では伝統的なサーカスでは見られない画期的な新しい装置を開発して、唯一無二のスタイルが注目を集めている、という。 今回上演される「Drop Shadows かげのしずく」は、「La bête noire(黒い獣)」の抜粋で構成される、今回の福岡公演のために作られたプログラムだ。ボワテル自身が曲芸師であったという過去に戻り、カンパニー(チャイニーズ・ポール、綱わたり、ダンス)のダンサーによるアクロバット、空中パフォーマンスという原点に戻った作品だという。ぽんプラザホールで午後4時の回を観た。演出・振付:ラファエル・ボワテル。 3つの場面で構成される上演時間約30分という短い舞台だが、キラッと輝くものに触れた感触があった。 舞台も衣装も黒で舞台一面にスモークがたかれ、スポットに近い照明がパフォーマーに一方向から当てられる。全体を通して舞台は暗い。 第1場はソロのアクロバットダンス。床から立ち上がることはなくて動きは少ないが、パフォーマーの身体が際立つ。暗い陰鬱な印象だ。 第2場はペアで、ワイヤーアクションとコントーション。第1場で床にへばりついていた肉体が宙を舞うのが新鮮で、舞台を床す…

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中村吉右衛門著「夢見鳥」

昨年7月に日経新聞に連載された二代目中村吉右衛門の「私の履歴書」に加筆されたものに、主な演目についてのインタビューが追加され、巻末に90ページにわたる出演記録(年表)が付く。 二代目吉右衛門の実母・正子は初代吉右衛門の娘で、男の子を2人生んでその1人を跡取りがなかった初代の跡取りとすると初代に約して、五代目市川染五郎(のちの八代目松本幸四郎・初代松本白鸚)と結婚した。こうして二代目吉右衛門は、一代で名優にのぼりつめた祖父・初代吉右衛門の名跡を継ぐという宿命のもとに生まれた。 そのあたりのことは「私の履歴書」の前半部分である「第一章 宿命」で語られている。22歳での二代目吉右衛門襲名後のことが「第二章 二代目」で語られる。 二代目吉右衛門の名を初めて意識したのは1970年ごろに、「アンダーグラウンド・シアター自由劇場」を拠点劇場とする「演劇センター」の機関誌「同時代演劇」で、インタビュー記事か署名記事を見たときだった。アングラ演劇に興味を持っている歌舞伎役者がいることに驚いた。 兄の八代目松本幸四郎・二代目松本白鸚の舞台はけっこう観ているのに、二代目吉右衛門の舞台は数回しか観ていないが、まだまだ観るチャンスはあるな。

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映画「50回目のファーストキス」(録画)

日本リメイク版作品の地上波放送の録画を見た。まぁおもしろかった。 ピーター・シーガル監督による2004年製作のロマンチック・コメディ「50回目のファースト・キス」のリメイク版で2018年の作品。脚本・監督は福田雄一。オリジナル脚本はジョージ・ウィング。 (あらすじ)ハワイのオアフ島でツアーガイドとして働きながら天文学の研究をしているプレイボーイの大輔は、地元の魅力的な女性・瑠衣とカフェで出会う。2人はすぐに意気投合するが、翌朝になると、瑠衣は大輔についての記憶を完全に失っていた。瑠衣は過去の事故の後遺症のため、新しい記憶が一晩でリセットされる“短期記憶喪失障害”を抱えているのだ。そんな瑠衣に本気で恋をした大輔は、彼女が自分を忘れるたびにさまざまな手で口説き落とし、毎日恋に落ちて毎日ファーストキスを繰り返すが……。 元になったピーター・シーガル監督の映画は見ていないが、基本的なところはそのままのようだ。舞台がハワイというのもいっしょなのは、国内での撮影じゃロマンチックな雰囲気が出しにくいからだろう。 それにしても瑠依役の長澤まさみは、この人のサバサバした感じがハワイに合いすぎるほどによく合っている。比べると、大輔役の山田孝之がどっか萎縮している感じさえする。佐藤二朗とムロツヨシはやや抑え気味だが、この映画が福田雄一作品であるとちゃんとマーキングしている。 神の差配ともいうべき瑠衣の“短期記憶喪失障害”という試練を、2人の愛がどう克服していくか。そこのところは大仰では…

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