キノG―7「今は昔、栄養映画館」

竹内銃一郎の戯曲を竹内自身の演出で竹内と松本修が演じるとなれば、もうこれは見逃せないと熊本のstudio in.K.まで行ったが、傑作戯曲を台なしにしたつまらない舞台だった。作者自身が自分の戯曲を貶めてはいけないだろう。 この舞台は、竹内が立ちあげた新たな企画「あと3年あと5本」の第一弾だ。竹内は72歳になったばかりで、老け込む歳ではない。「あと3年」とは75歳で区切りをつけるという意思表示なんだろうが、何で区切りをつける必要があるのか。 「今は昔、栄養映画館」は1983年に初演され、今もなお上演が繰り返されている戯曲だ。「あと5本」の残りが、今回のような自身の戯曲の劣化上演にならないことを願うばかりだ。 映画の完成レセプション会場でお客を待つ監督と助監督。あと5分で始まるっていうのにお客が全然来ない。なのに、列席予約の電話が次々にかかり始める。 20個ほどもイスが並べられた舞台で、監督と助監督とのコント的なやり取りが続くが、何の寓意も見えてはこず、最後まで見せ場は現れることはなかった。 竹内の舞台は、それなりの俳優がいて、そこに竹内の緻密な演出が加わることによって、舞台の質の高さが保証されていた。 この舞台では2人の出演者が、俳優が本職ではないことと歳を取ったことに甘えていて、本気で演じようとはしていない。加えて、演出も竹内自身によるために、徹底的に練り上げることをせずに、俳優のレベルに迎合した安直な演出に終始した。 竹内自身による前説からして逃げの姿勢…

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梅棒「ウチの親父が最強」

ダンス×J-POPの梅棒のEXTRAシリーズ「ウチの親父が最強」の福岡公演の昼の回を西鉄ホールで観た。楽しかった。 5000人近くを動員した2014年の梅棒第2回公演の舞台の再演で、作・総合演出:伊藤今人、振付・監修:梅棒。 お好み焼き屋を営む親子4人と祖父という仲のよい一家が、ヤクザに絡まれて離散してしまう。絡まれたのは、一家の娘が恋したのがそのヤクザの手下だった。 そんなコテコテのロミジュリを、家族愛でハッピーエンドにもっていく。 J-POPの曲に合わせて踊るノンバーバルショー。ストーリー合わせた選曲と具象的な振付のダンスで、話の展開はよくわかる。 多彩な曲に合わせてのキレのいいダンスはとても楽しい。場面転換のテンポがよくて気持ちいい。 梅棒のダンサーたちは早替りでいくつもの役をこなしながら、恋人役を演じる客演の横山結衣と多和田任益の初々しさを際立たせていた。

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