キノG―7「今は昔、栄養映画館」
竹内銃一郎の戯曲を竹内自身の演出で竹内と松本修が演じるとなれば、もうこれは見逃せないと熊本のstudio in.K.まで行ったが、傑作戯曲を台なしにしたつまらない舞台だった。作者自身が自分の戯曲を貶めてはいけないだろう。
この舞台は、竹内が立ちあげた新たな企画「あと3年あと5本」の第一弾だ。竹内は72歳になったばかりで、老け込む歳ではない。「あと3年」とは75歳で区切りをつけるという意思表示なんだろうが、何で区切りをつける必要があるのか。
「今は昔、栄養映画館」は1983年に初演され、今もなお上演が繰り返されている戯曲だ。「あと5本」の残りが、今回のような自身の戯曲の劣化上演にならないことを願うばかりだ。
映画の完成レセプション会場でお客を待つ監督と助監督。あと5分で始まるっていうのにお客が全然来ない。なのに、列席予約の電話が次々にかかり始める。
20個ほどもイスが並べられた舞台で、監督と助監督とのコント的なやり取りが続くが、何の寓意も見えてはこず、最後まで見せ場は現れることはなかった。
竹内の舞台は、それなりの俳優がいて、そこに竹内の緻密な演出が加わることによって、舞台の質の高さが保証されていた。
この舞台では2人の出演者が、俳優が本職ではないことと歳を取ったことに甘えていて、本気で演じようとはしていない。加えて、演出も竹内自身によるために、徹底的に練り上げることをせずに、俳優のレベルに迎合した安直な演出に終始した。
竹内自身による前説からして逃げの姿勢…