中村吉右衛門著「夢見鳥」
昨年7月に日経新聞に連載された二代目中村吉右衛門の「私の履歴書」に加筆されたものに、主な演目についてのインタビューが追加され、巻末に90ページにわたる出演記録(年表)が付く。
二代目吉右衛門の実母・正子は初代吉右衛門の娘で、男の子を2人生んでその1人を跡取りがなかった初代の跡取りとすると初代に約して、五代目市川染五郎(のちの八代目松本幸四郎・初代松本白鸚)と結婚した。こうして二代目吉右衛門は、一代で名優にのぼりつめた祖父・初代吉右衛門の名跡を継ぐという宿命のもとに生まれた。
そのあたりのことは「私の履歴書」の前半部分である「第一章 宿命」で語られている。22歳での二代目吉右衛門襲名後のことが「第二章 二代目」で語られる。
二代目吉右衛門の名を初めて意識したのは1970年ごろに、「アンダーグラウンド・シアター自由劇場」を拠点劇場とする「演劇センター」の機関誌「同時代演劇」で、インタビュー記事か署名記事を見たときだった。アングラ演劇に興味を持っている歌舞伎役者がいることに驚いた。
兄の八代目松本幸四郎・二代目松本白鸚の舞台はけっこう観ているのに、二代目吉右衛門の舞台は数回しか観ていないが、まだまだ観るチャンスはあるな。