2018年に世界初演された舞台の再演。午後5時半から8時45分まで博多座で観た。とても楽しめる舞台だった。満員御礼。
原作:ジョヴァンニ・ボッカッチョ「Teseida」、ジェフリー・チョーサー「騎士の物語」、 ジョン・フレッチャー/ウィリアム・シェイクスピア「二人の貴公子」、脚本・演出:ジョン・ケアード、音楽・歌詞:ポール・ゴードン、日本語脚本・訳詞:今井麻緒子、音楽監督・オーケストレーション・編曲:ブラッド・ハーク、振付:デヴィッド・パーソンズ
(あらすじ) 伯父クリオン王に仕えるテーベの騎士で従兄弟同士のアーサイト(堂本光一)とパラモン(井上芳雄)。アテネとの戦いでテーベは破れ、二人はアテネ大公シーシアス(岸祐二)の捕虜として囚われの身となる。二人は牢獄の窓から中庭を散策するシーシアスの美しき妹・エミーリア(音月桂)を見かけて、同時に恋に落ちてしまう。
アーサイトは親族が身代金を支払ったので牢獄を解かれて国外追放の身となったが、エミーリアに会いたい一心で、ジェロルド(大澄賢也)率いる森の楽団一座にダンサーとして加わり、取り立てられてエミーリアの従者になる。一方パラモンは、牢番の娘(上白石萌音)の手引きで牢獄を脱出して森に逃れる。身を隠したパラモンが自分を捨てて逃げたと誤解した牢番の娘は、ショックのあまり正気を失ってしまう。
アーサイトとパラモンは、どちらがエミーリアにふさわしい男かを決するために、決闘をしようとするが……。
東宝がジョン・ケアードにオファーして作ったオリジナルミュージカルだ。それだけでも意気込みがわかる。
ケアードは男二人が出る戯曲としてシェイクスピア/フレッチャー「二人の貴公子」を選んでミュージカル化した。「二人の貴公子」の原作であるチョーサー「騎士の物語」や、ボッカッチョ「Teseida」も参考にしているようだ。
演出もケアードが担当し、音楽も振付も国外から呼んだスタッフが対応したプロジェクトで、日本で作られたオリジナルミュージカルとしては最高レベルのものだろう。このレベルの舞台を日本人スタッフだけで作れたら尚いいんだが。
みごとな構成の脚本を元にして、卓越した演出と一流の音楽、振付によって、俳優の力も引き出された。特に、アンサンブルがいつもの東宝ミュージカルとはひと味違った。その結果、舞台全体の充実度が大きく向上していた。
巨大な半円形の装置に回り舞台でスムーズな舞台転換を行い、オーケストラに加えて和楽器奏者を舞台奥に置いた。その効果は十分に出ていた。
スペクタクルではあるがケレンは押さえてドラマを見せる。喜劇なのだが苦味も多い。ただ、ラストは原作を若干変えて完全なハッピーエンドにしていた。
正気を失った状態で踊る上白石萌音の牢番の娘が壮絶。上白石萌音は紅白出場が決まった。朝ドラはいつ撮っているんだろう?と思ったが、トリプル主演だからいいのか。
ヒポリタ役の島田歌穂もすばらしかった。
(写真は、「演劇キック」HPより)
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