シアターコクーン「物語なき、この世界。」(録画)

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昨年7月にBunkamuraシアターコクーンで上演された舞台の、WOWOWで2月に放送された舞台映像を録画して見た。
作・演出:三浦大輔 出演は、岡田将生、峯田和伸、柄本時生、内田理央、宮崎吐夢、米村亮太朗、星田英利、寺島しのぶ、増澤璃凜子、仁科咲姫、日高ボブ美、有希

(あらすじ) 舞台は新宿・歌舞伎町。30歳を過ぎても仕事がない俳優の菅原裕一(岡田将生)は、歌舞伎町のある風俗店で、田舎の高校時代の同級生で現在は売れないミュージシャンの今井伸二(峯田和伸)と再会する。気まずい空気が流れる中、2人はふとしたことから見知らぬ中年男(星田英利)と口論になり、男を突き飛ばしてしまい、男の頭からは大量の血が噴き出す。2人は、裕一の彼女・里美(内田理央)。伸二の後輩・田村(柄本時生)やスナックのママ・智子(寺島しのぶ)を巻き込み、この“事件”に対峙することになり……。(ステージナタリーのHPより)


三浦大輔は、人と人との距離感を的確に描き出す。
この舞台でも、菅原と今井の距離感の精緻な描写が最初から際立つ。泥臭いのに軽快で引きずらない、という絶妙な匙加減で、二人の互いに対する感情の変化が手に取るようにわかる。それでいて、どこに行くかわからないような不安定さも感じさせる。

“そもそも、この世の中に「物語」など存在するのだろうか…”というテーマに沿って、いかにも「物語」がないかのような展開を装う。
登場人物たちは「物語」が見えない、というか、「物語」を見まいとする。しかし、彼らのリアルなセリフのなかにナマクラな「物語」という言葉が挿入される。スナックのママ・智子の口から、「『物語なき、この世界。』の『き』が嫌いだ」というセリフが幾度か出てくるが、そこで感じる違和感からして、彼らがいかに「物語」を欲しているかがわかる。

上演時間は、第1部が1時間、第2部が1時間10分。スナックのママ・智子(寺島しのぶ)が登場する第2部で雰囲気がガラリ変わって、作劇上ちょっとムリしている感じがする。
菅原(岡田将生)のラストのセリフで「物語」はリセットされるが、その時点で彼と今井に所持金があるのか、他人事ながら心配になった。

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